知らない人から本を贈られた

ちょっと面白い経験をしたので忘れないうちにメモしておく。

出かける用事が2つあって、1個目と2個目の間にそこそこ長い空白が挟まる日があった。移動時間を除いても3時間ほど余る。どうしようか考えて、およそ6キロの道のりを歩くことにした。

曇ってはいるものの過ごしやすい天気の中をひたすら歩いていると、1つの書店が目に入った。外濠書店というらしい。書店というかコンセプトカフェ?的なものに併設された本を売るコーナーみたいな感じ。まだまだ時間に余裕があるので中を覗いてみると、面白そうなものを見つけた。

サン・ジョルディの日(4月23日)にかこつけて、いろいろな人に本を贈ろうという企画らしい(概要)。ロッカーの中にメッセージカードと紙袋が置かれている。メッセージカードには、本のジャンル、価格、短いコメントが書いてある。書かれた内容に惹かれるものがあれば自分も本を買ってロッカーの中身と交換できる。もともとの本を入れた人には後日連絡が行って、本の交換が成立する。ロッカーから出してもらうまで本のタイトルは分からない。

会期も終わりに近づいているからかそもそもあまり知られていないのか、ロッカーは1つしか埋まっていなかった。「モヤモヤ悩んでいる人へ」と題されたメッセージカードと、青い紙袋。誰かに届いてほしいと願って書いたんだろうそのカードが、受け取られることなくひっそりと処分されてしまいそうになっていた。

だから、1冊本を買ってきた。外濠書店以外で買ってもいいらしいので、小走りで市ヶ谷駅まで戻って、駅のそばにある文教堂で見繕った。ここ半年ほどの間に読んだ本を思い返しつつ、在庫状況とも相談して、ベストではないが次善の策と言える1冊にした。

交換する時はこちらからもメッセージカードを付けられる。本のおすすめポイントをいくつか書きつけて店員さんに預けて、引き換えに青い紙袋を受け取った。

すぐに開けるのはもったいない。この人はどんな本を選んだんだろう。その本から何を得たんだろう。想像しながら歩く道のりはいつもより楽しかった。カバンの中に小さな秘密が入っている。

家に帰ってカバンから紙袋を出して、もう一度メッセージに目を通してから慎重に封を解いた。

……ほう…………?

自分では絶対に選ばないだろう本が出てきた。なんかそれが面白くて、変な笑い声が出た。というかこんなジャンルの本があるのか。

実はまだ読んでいない。メッセージカードを栞の代わりにしながら、ゆっくり読もうと思う。

私が託した本も、無事に届いて「ほう……?」ってなってもらえてたらいいな。恐らく想像もしていないジャンルから選んだ1冊なので。

今週のお題「読みたい本」